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緑のカーテン

今年の夏は暑かったですね~

熱中症という言葉も、ニュースで耳にしない日はなく、日本語としてもすっかり定着してしまいました。

窓際にあるメインのサーバーのパソコンをつけるとき、夏になると、早朝から刺すような陽射しが飛び込んできて、今日一日の暑さを思ってうんざりしていました。

今年はクリニック正面の大きなガラス張り一面に、緑のカーテンを作ったので、強い陽射しは遮られ、緑の色と洩れてくるやわらかい光で、クリニックの始業の準備をしながら、自然に自分の顔がにっこりしてくるのがわかりました。

この緑のカーテンは、受付のサトウさんの発案です。ある春の土曜日に、サトウさんとご家族が、土と苗と肥料を持ってきて植えてくれました。プランターと支柱は、ナースのWさんが、寄付してくれたものです。それ以来、休みの日でも誰かしらが水をあげに来てくれて、あっという間に蔓が延び、葉を広げました。

患者さんたちも、育てるのにいろんなアドバイスをしてくださったり、クリニックにいらしたときの挨拶がわりの話題になったり、ゴーヤの成長をみんなで楽しみにみてきました。

夏休み中は、うちの患者さんで近所にお住まいのHさんが申し出てくださって、毎日朝夕水やりに来て、枯れた葉っぱの掃除などの世話をしてくださいました。その後も、朝クリニックに来ると「今朝はもう水をやりました」という立て札が立つようになりました。昨日も「連休も水やりにきますのでご心配なく」という立て札をみて、「いつもありがとうございます」と返事の立て札を立ててきました。

たくさんの人たちの愛情のこもったまなざしと世話で、予想外に大きくなった緑のカーテンが、ひと夏じゅうさわやかさと涼しさを届けてくれました。ゴーヤもたくさん収穫できて、順番にみんなでいただきました。

9月も半ばとなり、緑のカーテンの季節がまもなく終わります。緑のカーテン作りは、これから、西荻ペインの夏の行事になりそうです。

病院の実力「痛み治療」

最近、読売新聞を見ました、という患者さんからの問い合わせがあるので、どうしたんだろうと思っていました。

9月1日の読売新聞の17面の「くらし、健康」欄の『病院の実力』というコーナーで、ペインクリニックがとりあげられていたことがわかりました。

全国の医療機関の痛み治療の実績を調べたもので、2012年の新規初診患者数、頭痛の患者数、腰や背中の痛みの患者数、神経ブロックの件数が表になっています。

ちなみにわたしの西荻ペインクリニックは、2012年の実績で下記のとおりです。

新規初診患者数:581人、頭痛:150人、腰背中の痛み:200人

神経ブロック件数:17500件

神経ブロックの数は、全国で5番目です。28面の都内版でも「病院の実力」コーナーがあって、こちらには、帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛と、三叉神経痛の数が表になっていました。

ちなみに、帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛は100人、三叉神経痛は3人となっています。この表をみていると、その医療機関のペインクリニック診療の特徴がわかります。神経ブロックを中心に治療しているのか、薬物療法や心理療法で治療をしているのかなどなど。

この夏の日本ペインクリニック学会の調査で、各施設での星状神経節ブロックの年間件数のアンケート結果が発表されましたが、西荻ペインクリニックは、星状神経節ブロックの件数は、全国のトップタイでした。うちでの一年間の神経ブロックの17500件のうち、11000件くらいは、星状神経節ブロックです。

今年になってからは、継続的に研修にきている麻酔科のドクターが何人かいますが、昨年は、98%がわたしの実績です。一所懸命やってきたから、と誇りに思うと同時に、支えてくれている受付やナースのスタッフに感謝の気持ちがわいてきました。

関東甲信越地方会

麻酔科学会の関東甲信越地方会に出席してきました。

土曜日の診療を終えて、会場の京王プラザにかけつけました。

今回は、8月から、うちのスタッフとなった櫻井先生が、帯状疱疹後神経痛についての症例を発表してくれたので、特別の学会です。

全国規模の麻酔科学会の総会では、3日間かけていくつもの会場に分かれて、麻酔科のさまざまな分野のテーマが同時進行して開催されます。興味が違っていると、あいたいと思っている人とも、会期中まったく顔をあわせないこともあります。

その点、地方会は規模が小さいので、たくさんの仲間とあうことができます。

お互いの近況報告や、診療についての意見の交換などを、時間を気にせずすることができました。

星状神経節ブロック後の皮膚温の変化

交感神経は血管を閉める働きをしているので、交感神経ブロックすると血管が開きます。

そのため、交感神経の中継地点である星状神経節をブロックすると皮膚温が上昇します。

昨日、左の星状神経節ブロックをした患者さんが、30分の安静時間終了後に
「みてください。こんなに温かくなってます」
と手を出されました。

両手を握ってみると、右手は冷たくて、左手はすごく温かくなっています。
すぐに皮膚温を測ってみました。

右手掌:28.6℃
左手掌:33.5℃

その方は、5℃も差がありました。

星状神経節ブロックで皮膚温に左右差がでるのはあたりまえの反応で、たいてい2℃~3℃は上昇します。
元の皮膚温が低いと差が大きくなるのだと思います。

皮膚温の上昇はたいてい数時間以上続きます。
中には「1週間経っても、まだブロックした側が温かいです」という方もいます。

それから、交感神経は汗を出す働きをしているので、星状神経節ブロック後は汗がとまって、皮膚がサラサラになります。
さきほどの方も、左手は冷たく湿っていて、右手は温かくサラサラでした。

天気と痛み(痛みのメカニズム)

例年なら、さわやかな青空の広がるこの季節ですが、ここしばらく思いがけないほど寒い日が続いていますね。クリーニングしたセーターを出して、暖房までつけています。

寒くなったり、雨が降ったりすると、痛みは強くなることが多いようです。

気圧の変化や気温の変化と痛みの関係を調べた動物実験では、あきらかな因果関係は示されていませんが、経験的には、確かに寒さや気圧の変化、湿度は痛みを増強させると思います。

慢性の痛みの代表である「帯状疱疹後の神経痛」は、もうすぐ台風が接近する、これから雨が降る、というときには痛みが強くなります。
「『痛い痛い』と言っていたら晴れていたのに急に雨が降ってきて、まるで天気予報みたいです」という言葉もよく聞かれます。

この1週間くらいの異例の寒さの中、診察室をしながら感じることは、寒さや湿度は痛みの閾値に影響するのだろうということです。

治療を始めたばかりで強い痛みが続いている時は、天気がよくても悪くても痛みの強さはほとんど変わりません。
中等度の痛みになると、気温が下がると痛みが強くなり快晴になると痛みが軽くなります。
軽症の痛みになると、雨が降っても痛みが強くなることはありません。

治療の経過にもあてはまります。

最初は天候には影響されずに一日中痛みがあるけれど、治療をしていくうちに天気によって時々つらい日があるという状態になっていきます。
そして、痛みが軽くなっていくと雨が降っても寒くてもほとんど影響をうけなくなります。
痛みが完全になくならなくても、そこまでいけば治療は終わりです。

五月晴れが待ち遠しいです。